暴れる子供

新卒で就職した保育園で、自分の感情を上手く表現できない男の子がいた。

ほんとは悲しいのに怒ってみたり、ほんとは泣きたいのに暴れてみたり。

わたしは赤ちゃんクラスの担任だった為、週に一度幼児クラスにヘルプに行く以外で関わることはなかった。

 

わたしには彼の気持ちが痛いほど分かって。

 

ねえほんとうは違うよねっていつも心の中で思っていた。

 

泣きたいのに泣けないんだよね。

悲しいのに、悲しいっていえないんだよね。

さみしいって、いえないんだよね。

 

そんな切なさと愛しさでいつも彼を見つめていた。

 

教育者や親に必要なのは、主導することのみではない。

 

子供と同じ目線や段階に降りて、共感と理解を示すことで一気に子供が変わることがある。

 

幼児クラスにはいったとき、友達と上手くいかなかったその子がキレて暴れたことがあった。

彼は泣きながら怒っていた。

 

私はそのとき、ああ、チャンスだな、この子の心に触れられる。

 

そんな一心で

 

抱きしめて「たくさん泣いていいんだよ」と伝えたことがあったっけ。

 

彼は堰を切ったようにたくさん泣いて、私を抱きしめ返してくれた。

 

その日から彼は私に素直な感情を見せてくれるようになった。

 

幼児クラスにいったとき、我先にと駆け寄って、抱きしめてくれた。

笑ってくれた。

泣いてくれた。

キスしてくれたこともあったな。

 

怒ったり、暴れたり、問題と言われる行動をとる子供の気持ちの裏には何があるんだろう。

 

私はそんなことばかり考えていて。

 

そのためには、どうしても1対1の関わりが長時間必要だった。

 

だから大人数を一気に見る保育に違和感を感じたんだ。

 

きれい事抜きで言えば、そんな関わりに疲れたこともあった。

 

先生だって、人間だもん。

先生だって、労働者だもん。

 

そんなふうに思っては涙が出そうな時もたくさんあった。

 

それでもやっぱり

 

子供って、頭にくることもなにもかも含めて

 

命かけてもいいって思わせてくれる瞬間がある

 

それは100回のうち1回かもしれない

 

でも、そんな瞬間は何者にも代えがたく思えたりもする

 

まあ、私は弱い人間なんですけどね。